超伝導検出器とSonnet

応用

超伝導検出器がいつの間にか素晴らしいレベルに達したとのニュースを紹介します.Sonnetは,特にKIDと呼ばれる超伝導検出器の研究に10年以上前から関わってきました.

ついにフォトン一個を検出できるカメラ

“光子を正確に検出して「暗闇でもノイズ皆無な写真」「ピコ秒クラスの超スロー映像」「脳のリアルタイムスキャン」などの撮影を可能にする40万画素のフォトンカウンティングセンサーが開発される”

IEEE Spectrum掲載の原文 : Dina Genkina, “At Last, Single-Photon Cameras Could Peer Into Your Brain” 03 Jul. 2023 IEEE Spectrum.

超伝導検出器の原理

超電導導体が常導体に変わるギリギリの臨界状態にあると,微小なエネルギーの変化で導体の性質がガラリとかわります.右のグラフでは8ケルビン付近でインダクタンスが劇的に変化しています.これを利用して様々な分野の高感度検出器を実現できる可能性があります.

特にKID(Kinetic Inductance Detector)は超電導導体で作った共振器の共振周波数の変化を利用する検出器で,特に共振器として分布伝送線路でなく,集中定数的インダクタとキャパシタで構成したものをLEKID(Lumped Element KID)と呼ぶようです.

Sonnetの関わり

KID, LEKIDの研究では早い時期からSonnetが利用されてきました.右の本で解説している設計過程の各段階でSonnetが使われ,その内容には米国Sonnet社のスタッフが関わっています.当時はまだ検出素子1個あるいは数個をならべる段階で,たくさん並べた時どう配線するかが大問題だったのですが,冒頭の記事では4万画素と書いてあって驚きです.

ISBNのついた書籍ですが,これを書いている2023年7月の時点で自由にPDFをダウンロードして読めるようです.

Markus Rösch, “Development of lumped element kinetic inductance detectors for mm-wave astronomy at the IRAM 30 m telescope“, 2013, KIT Scientific Publishing. ISBN978-3-7315-0110-7.

日本では入門書にも超伝導導体の温度依存性モデルについての解説を置いてあります.

また超伝導導体で作った共振器は非常にQが高く,共振ピークを観測するには周波数分解能が不足する場合の工夫も解説もあります.