概要
Sonnet Porofessionalのconformal meshを使えば円形のインダクタを精度良く解析できるが、 Sonnet Liteでも 円形のインダクタを等価な方形インダクタに置き換えて解析すれば 問題を解決できる場合がある. ここでは、 インダクタの線径と長さが巻径より十分小さい円形インダクタを、等価な方形インダクタに置き換える方法を紹介し、それをシミュレーションで確認する. また、その過程でインダクタの解析で注意すべきことも紹介する.
基本
対象とするインダクタ
下表の条件のようにコインのような形状に巻いた円形インダクタは、直径Dに対し0.85〜0.88D程度の辺長の方形インダクタと等価なインダクタンスを持つ.
考え方
上記の形状のインダクタのインダクタンスLは、Sを面積、Nを巻数として
シミュレーションでの確認
円形インダクタモデル
一例として直径64mm線幅1mmの円形の一回巻インダクタをモデル化した. ソネットのモデルは境界面が電気壁なので、インダクタの周囲に直径と同程度かそれ以上の空間を確保しなくてはならない.そこでここでは256x256x256mmの空間に問題のインダクタを配置した.導体のセルサイズ(解析の最小単位)は0.25x0.25mmで、線路幅あたり4セルに設定したが、conformal meshを使用したので解析時間とメモリ使用量は8秒、12MBで収まった.
round.zonモデルファイル
(sonnet professionalが必要です)
低い周波数域の限界の確認
多くの高周波シミュレータは低い周波数領域で大きな誤差が生じることがある. そのなかでソネットはとても低い周波数域まで解析できるがそれでも限界はある.
上の図は円形インダクタのIm(Z)の解析結果で、 Im(Z)=ωLならばこれは直線になるべきであるが、 0.01Mhz以下では不自然な変化をしている. sonnetの場合この低い周波数領域の限界は サブセクションの大きさと波長の比で決まる. セルサイズが大きいほど、またconformal meshを使うとより低い領域まで解析できるようになる.
この低い周波数の限界領域では電流分布にも異常が現れることが多い. 上図左は0.001MHz,右は10MHz
高い周波数域の限界の確認
高い周波数領域では、解析モデルが、設計者が想定していない様々な振る舞いを始める.この問題では浮遊容量によってインダクタの自己共振の影響が見え始める周波数領域に達すると、問題をインダクタでなく、キャパシタと並列の共振系として扱わなくてはならなくなる.電磁界シミュレータはそのような周波数領域を遥かに超えて使用できるが、ここでの検討課題ではないのでその領域を明らかにし、避けなくてはならない.
上の図は円形インダクタのIm(Z)の解析結果で、 Im(Z)=ωLならばこれは直線になるべきであるが、 100〜300Mhzの間で下に凸の曲線を描いていることがわかる. すなわちこの周波数領域では自己共振の影響が現れている.
以上の検討から、このモデルが0.1MHzから30MHz程度では、低い周波数のシミュレータの限界にも余裕があり、高い周波数の自己共振の影響も受けないことがわかる.それゆえ、以下の検討では10Mhzを使用する.
さまざまな寸法の方形インダクタ
同じセルサイズや境界条件で方形インダクタのモデルを解析した. ただし、インダクタの一辺の長さはパラメータスイープで変化させて 上の円形インダクタのインダクタンスと一致する方形インダクタの一辺の長さを調べた.
sqr.zonモデルファイル
(sonnet professionalが必要です)
結果
一辺の長さL=54.5mmの方形インダクタのインダクタンスは,D=64mmの円形インダクタのインダクタンスとほぼ一致した.この文書の冒頭の検討では、L=√π/2*D=56.7mmなので、円形インダクタと等価な方形インダクタの辺長は予測に対して-4%の0.85D程度となった.