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Sパラメータファイルから広帯域Spiceモデルを作る操作方法

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bbextractオプションがあれば、Sonnetの解析結果だけでなく、さまざまな部品メーカから提供されるSパラメータファイルや、他社の電磁界シミュレータや回路シミュレータが出力するSパラメータファイルをSpiceモデルに変換することができます. この文書ではその操作の方法を解説します.Sパラメータファイルの形式は業界標準ではありますが、ファイル形式を企画した会社は既にこの世に無いので方言(特に単位)に注意してください.spiceモデルファイルを各社のSPICEに読み取らせる方法についてはそれぞれのSPICEのマニュアルに従ってください.


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emgraphで目的のsパラメータファイルを開き,正常か確認します.

  • ここではsパラメータの例としてtestfile.s2pを用意しました.
  • グラフの目盛や表示項目を適切に設定してください.それらの設定方法はソネット入門に詳しく説明してあります.右の例では4つのsパラメータを全て表示し,周波数軸を対数目盛にしてあります.これは一例です.目的のデバイスの特徴を把握しやすい目盛と項目を表示してください.
  • sパラメータファイルのcausalityを確認してください.例えば次のようなデータを含むsパラメータファイルからは正常なモデルが抽出できないことは容易にご理解いただけると思います.
    • 特定の周波数だけで飛び抜けた値
    • passive素子でありながらLoss Factorが正
    • ランダム雑音
    • 非常に小さな値
    • 50未満のデータ数
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[Output]-[Broadband Model File...]を選びます.

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spiceモデルへの変換条件の設定ダイアログが開きます.

  • [Error Threshold]を無闇に小さくしないでください.そうすると与えられたデータだけに精密に一致し,データが存在しない領域で極端な結果になる恐れがあります.また,無闇と規模の大きいモデルを生成し,処理時間が長くなります.
  • [Stability Factor]は
    • Stabilityの問題が起こったときのみ、この値を大きくしてください.
    • 強い共振を持った構造では小さめ, 逆に不安定な構造では大きなStability factorを設定してください.
    • Stability factorのデフォルト値は1e-3で、一般的な値は 1e-5から0.5までの間です.
    • bbextractは極の絶対値に対して実部をStability factor以下にしません.
  • [Advanced...]ボタンでより詳細な設定ができます.
必要に応じてこれらを設定して [Extract...]ボタンを押します.
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Advancedダイアログです.

Predicted S-parameters
抽出後のモデルから逆にSパラメータを予測する設定です.デフォルトでは与えられたSパラメータの最大周波数の3倍の周波数まで抽出したモデルに基づいた予測を行い,結果を...predict.snpというファイルに書き込みます.Sパラメータには通常[DC point]のデータは含まれませんが,モデルに基づいた予測は可能です.
Limit Modeling Band
抽出に使用する周波数範囲です.もちろんデフォルトでは与えられたSパラメータの範囲を使用します.
Total Order
モデルが使用する最大の次数です.この値を大きくすると複雑で大規模な等価回路を使います.
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変換結果のサマリです.

  • 変換時間は、周波数ポイント数とポート数の二乗に比例します. 2ポートでは一瞬で終わりますが,ポート数が多い場合は非常に長い時間がかかる場合があります.
  • 警告やエラーが表示されます.英文を理解して対処してください. 右の例では"0.38GHz以下の5つの周波数で系がpassiveでないのでthreshold値を上げたほうがいい"というエラーが出ていますが,そもそもこの例で使ったsパラメータが利得を持っているのでこのエラーは当然です.
  • [Plot]ボタンを押すと、今作ったSpiceモデルに基づいて逆にSパラメータを計算し、変換元のSパラメータファイルと一緒にグラフを描くことができます.
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変換結果のグラフです

  • 変換元のsパラメータ、今作ったSpiceモデルから逆に計算したSパラメータは一致しています.
  • 変換元のsパラメータには2GHzまでのデータしか含まれていないので,2GHz以上の周波数領域の予測値が現実の物理的なデバイスと一致しません.
  • 変換元のsパラメータにはDCデータが含まれていないので,このSpiceモデルを使ってSpice解析した場合のDCでの振る舞いは現実の物理的なデバイスと一致しません.
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生成されたファイル

testfile.s2p
変換元のSパラメータファイル
testfile.lib
Spiceモデルファイル
testfile_predict.snp
Spiceモデルから逆変換したSパラメータファイル.

20180209 v16を使って書き直しました.